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竜頭編その1 ~ 竜頭(りゅうず)とはなに?

トリビア・オブ・ウォッチ ~腕時計なるほど雑学~

腕時計にまつわる、意外と知られていないことや今さら聞けないことなど知っておきたいあれやらこれやら。

竜頭編その1 ~ 竜頭(りゅうず)とはなに?

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そもそもなんのこと?

腕時計の針を時刻に合わせたり、機械式時計のぜんまいを巻くための「あの部分」を指差して、「これ、なんていうか知ってる?」と試しに周りの人に訊いてみてください。ねじ?ダイアル??いったい何割くらいの人が正しく答えられるでしょうか?

おそらく半分?あるいはもっと少ないのではと思います。もちろん答えは『竜頭(りゅうず)』。さらに名称としては知っていても文字にする際には、多くの人が『リューズ』とカタカナで書くようです。意外と英語だと思われていますが、漢字があるくらいですから、これは日本語の名詞なのです。

「竜頭」という概念

では、漢字で竜頭と打って検索してみましょう。

竜頭(りゅうず)の意味 (from goo辞書)

① 竜の頭、またはそれをかたどったもの。
② 釣鐘を梁に吊るすための吊り手。
③ 仏具の幡(ばん)のさおの先につける吊り手。
④ 兜の前立て(まえだて)につける飾り。たつがしら。
⑤ 腕時計・懐中時計のぜんまいを巻き、針を動かすためのつまみ

へぇ竜頭っていろいろあるんですねー。時計の竜頭はことばの解説の一番最後に出てくるほど歴史もなくマイナーな存在なのか!? それと兜の正面の飾りのことを「たつがしら」と言うのか。なるほど・・・・ いやいや感心している場合ではありません。この解説の中では特に②が気になります。釣鐘か、そういえば鐘の上部には出っ張りがあったな。 ということでここから調べに入ります。

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どうやら釣鐘(梵鐘)と関係が・・・

あの釣鐘の上の出っ張ったところは吊り下げるロープのいわば通し穴(フープ)。この吊り下げフープ部分のことを正式には「蒲牢(ほろう)」と言うのだそうですが、この部分の意匠としては竜が好んで使われてきました。蒲牢とは何のことかと言うと、古代中国の伝説の生き物で「竜生九子(りゅうせいきゅうし)」と呼ばれる龍の子どものうちの一匹のこと。兄弟の中では一番親である竜に見た目が似ていて吼えるのを好んだ。その伝説の生き物にあやかり、鐘の音が大きく響くようにとフープ部分にこの竜に似た生き物を飾りとして施した。そのためこのフープには施した生き物の名前そのものである「蒲牢(ほろう)」が名づけられ、その後この"出っ張りフープ部分"はその名と竜の意匠とセットとなり一般化していきます。

鐘は外部に触れる部分が少ないほうが音量も残響も増えるので、しっかりと鳴らすためには吊るすのが合理的。そして吊るためのフープ部分によく吼える竜の子どもの名をつけた・・・なるほどこれは粋な命名です。そして中国の梵鐘は仏教と共に日本に伝来、日本でも同じようなものがたくさん作られることとなっていきます。

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このように、釣鐘の吊り手の出っ張りフープを当初は「蒲牢」といい空想上の生き物の形をかたどっていた。蒲牢は竜とは別の生き物なれどとてもよく似ていたため、その後呼び名は見た目のとおり「竜頭」に変わっていった、というわけです。 (2020.07.15)


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松崎充広

1963年埼玉県生まれ。
2019年、当振興会を創設しひとりの腕時計愛好家としての活動をスタート。
普段は某ウォッチセレクトショップチェーンを運営する会社の代表。