<Vol.1> 回ったり回らなかったり、一方向だったり二方向だったり。~ベゼルは飾りじゃありません~

トリビア・オブ・ウォッチ ~腕時計なるほど雑学~

腕時計にまつわる、意外と知られていないことや今さら聞けないことなど知っておきたいあれやらこれやら。 

その1:「ベゼル」といえばダイバーズウォッチ!

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ダイバーズウォッチとは?

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夏も終わりに近づいてきていますが、夏の腕時計の代名詞は「ダイバーズ」ですよね。 近年、メンズウォッチの一大トレンドとなっているダイバーズウォッチ。では一体どんな腕時計なのでしょう?

Wikipediaによると

「ダイバーズウォッチとは、通常より耐水性能を強化させた腕時計のうち、特に潜水作業で高水圧にさらされる環境において着用されるものをいう」 となっています。

その必要条件は、 

①100mの潜水の水圧に耐える(=10気圧以上の水圧に耐えられる)耐圧性  

②潜水時間を管理できる機能(タイム・プリセレクティング装置)

を有するということ。

①は、すなわち100m潜って、海中で動き回っても壊れない、水が入らない。

②については、今回着目する『逆回転防止ベゼル』が必要、ということです。

この二つの条件が担保されないと、「ダイバーズウォッチ」とは言えないのです。(ISO、JISなどの工業規格において)

逆回転防止ベゼル

タンクを背負った潜水には時間管理が重要なのは言うまでもありません。普通の潜水活動に使う大体容積で10L実際には2,000Lもの圧縮空気が入ります。これで水深10mなら、およそ80分持つ空気量。ただ人によってあるいは海の状況によっても消費量は変わるため、潜水してからの正確な計時はさらに重要です。タンクの空気があと何分残っているのかがダイバーの命に係わるわけですから。

そのため必要な機構が『逆回転防止ベゼル』。

使い方を説明すると、潜り始めるときに、ベゼルを回して▼マークを長針に合わせます。(これだけ!)

潜水中に長針が指すベゼルの数字を読めば、何分経過したかが一目瞭然となります。この時、ベゼルが逆方向に回ってしまうと、潜水開始が遅れて始まったこととなり、見かけ上の経過時間が実体より少なくなってしまいます。

もしダイバーが実際は30分潜っているのに20分しか潜っていないと思い込んでしまうと、空気の実残量は想定よりずっと少ない。その誤った状態で潜りサメにでも出くわして逃げ回る、なんてことがあると大変です!タンクの残量にはまだ余裕があると思いきや、気付いた時にはもう手遅れ。。。理屈の上では起こり得ます。こうした事態を防止するためにベゼルは反時計回り方向にしか回らないように作られています。 

え? そんなに心配ならスタート時刻を設定しベゼルを固定すればいいじゃないか?確かにそのような機構を考案したメーカーもありますが、固定式となるとさらに操作が複雑になりますよね? 機構が複雑化すると時計に邪魔な突起物が増えたり、なにより手袋をはめた手、ましてや海の中で操作するのは限界があります。時が戻る方向の反時計回りのベゼルであれば、もし潜水開始後にベゼルが動いてしまってもそれにより見かけ上の経過時間は、実際より短くなるだけですから、前述したような緊急事態になっても空気不足となる危険性は減ります。 

潜水時間を測るならストップウォッチ機能つきの腕時計でも可能です。針式のクロノグラフなんかも役に立ちそうです。しかしながら、さきに述べた防水性や視認性の面ではアナログの3針で逆回転防止ベゼル付きが明らかに分があります。クロノグラフはプッシャーの機構に防水性を確保するのは難易度が高いし、なにより操作が煩雑です。デジタル表示のストップウォッチはときに時計が見づらい状況に置かれるダイビングには不向きです。ELバックライトのような内照式も可能ですが、時間を確認するたびに両手が使えなくなるのは不便です。こうしたことから、やっぱりダイバーズウォッチには逆回転防止ベゼルだよねー、ということになったわけです。そう、実によく考えられた機構なのです。

余談ですが、潜水に使うボンベを俗に「酸素ボンベ」と言いますが、実際は誤りです。意外にも知られていませんが、中に入っているのは酸素でなく圧縮された空気。また、正しくは「ボンベ」ではなく「タンク」あるいは「シリンダー」。ボンベはドイツ語由来の外来語のようですが、意味は英語の"omb(爆弾)"と同じ。酸素ボンベでは国外では全く通用しないようです。だいたい爆発したら大変ですよね。 おおかた見た目が爆弾に似ているから、そういう呼び方になったのでしょう。スパイ映画などでよく見る、港から逃げる悪党の追跡シーン。クルーザーの後方に積まれた「空気タンク」に拳銃で撃ちこみクルーザーはあえなく大破! お約束のラストですが、タンクの中身は空気なら、いくら圧縮しているとは言え、はてさて、あれほど大きく爆発するものなのでしょうか??(20200821

>>>次回へ続く 


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松崎充広

1963年埼玉県生まれ。
2019年、当振興会を創設しひとりの腕時計愛好家としての活動をスタート。
普段は某ウォッチセレクトショップチェーンを運営する会社の代表。