オラファー・エリアソン(前編)

仕事柄、アートや建築ととても近い所にいると思われがちだが、実はそれほどでもない。ただ、芸術家や建築家の中にはその考え方への共感から、知り合いでなくとも自分から会いに行き、仕事で協働をお願いするという方も珍しくない。自分はアートや建築というジャンルというよりも、共感できるものであれば、ファッションでも、料理でも、旅行でも、なんでも同じように興味の対象にしている。そしてそれは、現代においてはとても平凡な感覚だと思う。そして世の中には自分と似たような人は多いのではないだろうか?とも思ったりする。

そんな中、今回紹介するのはデンマーク生まれ、アイスランドの芸術家、ベルリンにスタジオを持つオラファー・エリアソン。 彼は水・光・色を用いて自然や現象をモチーフ(題材)に、あるいは作品の構成要素にしたスケールの大きいダイナミックな展示作品が話題の旬な現代美術家の人である。

現在、10年ぶりの大型の展覧会が東京都現代美術館で行なわれている。(https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/olafur-eliasson/)

彼の代表作をいくつか紹介すると

"Weather Project"  (http://ficka.jp/olafur/work/weather/)テート・モダン(ロンドン)で2003年に発表。屋内に大きな擬似太陽を作った作品。

"ICE WATCH LONDON" :ロンドンの街並みにグリーンランドのフィヨルドから流氷を持ち込み路上に設置。解けていく様を通行人に体感してもらう。 (https://bijutsutecho.com/magazine/news/headline/18987)

"Waterfalls"(シリーズ):マンハッタンのクイーンズブリッジの橋脚やベルサイユ宮殿の庭園に巨大な人工の滝を作り出した(http://ficka.jp/olafur/waterfalls/)等がある。

僕は彼の特別ファンという訳ではないが、彼の作品における幾つかの視点に共感している。

なかでもいちばん大きな点は「観る者の共感を作品の原動力にする」ということだ。彼は見る人に作品を自由に感じて貰いたいと言う。いわゆるメッセージを伝えることに固執しているわけではないらしい。しかしながら彼の作品には原風景に対しての強い没入があり、それをある手法で再現し垣間見せることで、受け手は経験した事のない擬似体験を得ることができる。その原風景は世界中の多くの僕のような平凡な感覚の持ち主にもしっかり伝わり、大きな共感というマーケットを作り出す事が出来る。この手法はスケーラブルで、いい意味でSNSビジネスと共通点を持っているように思える。旧来の美術家が自分の作品の唯一性を創作の原動力にしていたとすれば、オラファーは見る人の共感を創作の原動力にしているという事はとても現代的である。

又、様々なキュレーターの評価の中に彼の作品は確信的だとコメントをする人もいた。それは共感を得られる事が既に確信されているという事でもあり、その進め方にも現代性を感じる。

他にも共感する視点がいくつかあるが、せっかくなので、さきに挙げた東京での展覧会を観に行き、そのレポートと共にその共感視点について次回に述べてみようと思う。展覧会を観る前と後で私は何を発見できるだろうか?


上垣内さん.jpg上垣内 泰輔

商業施設・展示施設の内装・展示物等の製作を行う日本屈指の会社株式会社 丹青社 のデザインセンター所属のプリンシパルクリエイティブディレクター。1988年入社。数々のインテリアデザインを担当。アパレルショップ開発やバーゼルワールドでのパビリオンデザインを手掛ける。ドイツADAM賞など、数多くのアワードを受賞し、現在ではリテール、ホスピタリティ、エキシビジョン、オフィスなど、様々な分野にて横断的にディレクションを行っている。