竜頭編その2 ~ なぜ腕時計にその名が使われるようになったのか? 

トリビア・オブ・ウォッチ ~腕時計なるほど雑学~

腕時計にまつわる、意外と知られていないことや今さら聞けないことなど知っておきたいあれやらこれやら。

竜頭編その2 ~ なぜ腕時計にその名が使われるようになったのか?

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釣鐘のパーツの名前が時計にも?

腕時計のつまみにもこの竜頭という名称が転用されたのは、おそらく前述の「出っ張り」形状からではないかと思われます。実際腕時計が登場する以前、懐中時計の時代においては時計本体と鎖とを繋ぐリング部分全体を称して既に竜頭と呼んでいました。これは釣鐘の竜頭と同じように、この部分が懐中時計本体から出っ張っていることからの転用と考えられます。

ぜんまいを巻くつまみとしての竜頭は外に出っ張っていて邪魔です。そこで懐中時計ではこのリング部分とつまみを一体化させ、12時位置に配置したところ、これはとても理に適いました。二つの機能を同じ部分に合体させ、更にはに繋ぐ鎖もそこにまとめたわけですから。懐中時計を無理やり腕に着けたのが腕時計の始まりですが、その際最も邪魔なこのリングは鎖とともに必要がなくなりました。そして時計の機能上欠かせない「つまみ部分」だけが残り、竜頭という名前を引き継いだ。・・・・これが今回調べの結論です。

諸説こもごも

もちろん、これにも緒説が存在します。例えば古来より和船の舳先(へさき)には、漁や航海の安全祈願のため水の神である竜の頭を飾る風習があり、これを「竜頭」と言い、ここから由来したという説(=舳先は出っ張っているので、そこは当説と似ています)。他にも懐中時計の大きな竜頭には竜の意匠がよく施されていたから、という説などです。

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菊の花を連想させる通称『菊竜頭』

さて英語では竜頭のことを「CROWN(クラウン)」と言います。そう、王冠という意味ですね。確かにアンティークウォッチには、ぽってりとした王冠のような形状の竜頭を伴っているものが少なくありません。日本ではこれを菊の花に見立て「菊竜頭」と呼んだりします。

また、某スイスラグジュアリーブランドの腕時計の竜頭には必ず王冠のマークがアイコニックに施されています。しかしながらこれが竜頭のことをクラウンと呼ぶようになった由来だ、などというまことしやかな説明には全く根拠がなさそうです。筆者はずっと「あれはひとつのユーモアなのかも・・・」と勘ぐっておりましたが。. (2020.08.20)

・・・・・竜頭編その1 はこちら。。。


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松崎充広

1963年埼玉県生まれ。
2019年、当振興会を創設しひとりの腕時計愛好家としての活動をスタート。
普段は某ウォッチセレクトショップチェーンを運営する会社の代表。