01. 万年カレンダーの寿命は2019年?

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この腕時計は、ウィットナーというブランドの機械式3針モデル。時・分・秒に加えて曜日と日付が6時位置の窓に表示されております。で、文字盤に何やら数字とか月を表す文字列が並んでいますが、ここがアナログ式の万年カレンダーになってます。

竜頭を操作することで右サイドの窓にある数字を動かして、西暦の下2桁と月を合致させればその月の何日が何曜日なのかがわかる仕組み。通常は現在の月にセットして月末の30日は何曜日だっけ?とか確認できるんですね。便利ですけど操作は少々面倒です。

もちろん、過去に逆戻りして特定の年の何月何日が何曜日だったかを知ることもできますし、ずっと先の未来の日付に関しても同様に知ることが可能。クロノグラフが経過した時間を切り取る装置とするならば、これはカジュアルなタイムトリップ用品ですね。

この腕時計はおそらく1970年代の製造だと思われるのですが、久しぶりに万年カレンダーをセットしたくなって西暦下2桁の数字を出してやろうと竜頭をグリグリ動かしてみても、「20」が出てこない。どうやら「19」までで終わっているようなのです。

こちらの万年カレンダーは、2019年をもって終了しました。(ウィットナー談)

うっかりしていたのですが、このカレンダーは1万年のスケールに対応しているのではないんです。いわば"半永久的な切れ味のダイヤモンド包丁"みたいなもので、意外に早く寿命になってしまう。そこに昭和時代の便利アイテム特有の切なさを感じます。

そういえば、20世紀に作られたフィルムカメラのカレンダー写し込み機能も2019年より先に設定できないことが話題になっていました。天才写真家アラーキーはフィルムカメラのデートをすごく先に設定して"未来を撮影"していましたが、今後はそれも難しい。

でも、この腕時計は電子的にセットされるカメラのデート機能とは違いアナログ式だから何か活路があるはず。がんばって2020年に月と日付と曜日が合致する過去の年号を調べて擬似的にセットしてやれば、何となく使えないこともなさそうではあります。

これで、もはや寿命と思った万年カレンダー2020年問題はクリアできる!

そのドナー年号を調査するのにスマホとかタブレットとか使っているとしたら、そこに入っているカレンダーを見ればいいのでは? というご指摘ごもっともです。でもね、この万年カレンダーは、見た目のインパクトに捨てがたい魅力があると思うんです。


ガンダーラさん.jpgガンダーラ井上

ライター。1964年 東京・日本橋生まれ。早稲田大学社会科学部卒。松下電器(現パナソニック)宣伝事業部に13年間務める。在職中から腕時計の蒐集に血道をあげ、「monoマガジン」で世界のどこかの時計店で腕時計を買い求める連載を100回続ける。2002年に独立し「Pen」「日本カメラ」「ENGINE」などの雑誌や、ウェブの世界を泳ぎ回る。著作「人生に必要な30の腕時計」(岩波書店)「ツァイス&フォクトレンダーの作り方」「Leica M10 BOOK」(玄光社)など。